あれ?SNSシェアボタンが少ないなぁ…
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こんにちは!トクシル(@tokushiru)だよー
今回は特別支援と関連する看護業界の話だよ。
当記事のエビデンス
漆畑里美(2009).「個別性のある看護」に関する概念分析.日本看護技術学会誌,Vol.8,No.3,75
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsnas/8/3/8_74/_pdf
出来麻有子,小山内秀和(2022).発達障害当事者が求める支援と提供される支援の「ズレ」—当事者・当事者家族の記述文献から—.畿央大学紀要,第19巻,第2号
https://kio.repo.nii.ac.jp/record/89/files/kk.1902.10-25.pdf
当記事の「過剰支援」という言葉は、正確な定義がある言葉ではありません。しかし、概念は普及しているため、当記事では看護業界の「過剰介護」の定義を参考にし、以下のように定義します。
過剰「介護」
ベネッセスタイルケア.介護用語集「か」の介護用語から引用
要介護者ができないことを支援するのではなく、できることまで必要以上に支援してしまう介護のこと。
過剰介護についての詳細はこちら
過剰「支援」
当事者ができないことを支援するのではなく、できることまで必要以上に支援すること
アクセシビリティを例にすると、分かりやすいと思います。
アクセシビリティとは、日常的に利用するツールをより使いやすくする機能を指します。デジタル庁が提案するウェブアクセシビリティ(ウェブサイトが利用しやすくなる機能)の中には、ユーザーの過剰対応となるものがあります。
文字サイズの変更、読み上げプラグインの利用は非推奨
支援技術が必要な利用者は、既にOSの支援技術・アプリの支援技術・ブラウザの機能拡張を使っていることが多いため、サイトで支援技術を提供すると過剰対応になってしまいます。
また、利用者がサイトを閲覧するときに、サイトに支援技術の機能を実装してアクセシビリティを高めても、他のサイトでは使えないので効果は極めて限定的です。どのサイトも同様の支援技術を用いて閲覧できることを目指すべきです。
デジタル庁.ウェブアクセシビリティ導入ガイドブックから引用
ウェブアクセシビリティの詳細はこちら
つまり、
もともと端末にアクセシビリティの機能があるにも関わらず、重複する機能を別途サイトに搭載するのは過剰な対応だ。
特別支援に言い換えると、
もともと当事者ができるにも関わらず、できることすら支援してしまうのは過剰な支援だ。
ということです。
しかし、端末のアクセシビリティが不十分であった時代は、文字サイズの変更というアクセシビリティは過剰対応ではありませんでした。つまり、端末の技術が進化したにもかかわらず、サイトのアクセシビリティの見直しを怠ったというのが過剰対応の根本的な原因の一つと考えます。
つまり、
端末の進化に合わせて、アクセシビリティもアップデートする必要がある。
特別支援に言い換えると、
当事者の成長に合わせて、支援内容もアップデートする必要がある。
ということになります。
まとめると、当事者の成長を考慮せず支援することは、過剰支援につながる可能性があるということになります。
過剰介護の発生原因を見てみましょう
日本通所ケア研究会.過剰介護について から引用
- 自分たちの手間を省きたい[時間がない、待てない、見守れない]
- リスク回避[危ないので、やってしまう]
- 相手が喜ぶ、相手からの要求[してあげると相手が喜ぶから]
- 組織の慣習[今までそうしていたから]
- 誤解[してあげることが仕事だと思っている]
- アセスメント能力不足[相手の能力をきちんと把握できていない]
- 無知
- 無関心
- その他
過剰介護についての詳細はこちら
うっ、思い当たる節が…
支援の経験がある方にとっては、共感できる項目が少なくとも1つくらいあるのではないでしょうか。
9点の発生原因に共通しているのが、支援の主体が当事者ではなく、支援者が主体となっていることが理解できると思います。
また、過剰看護は当事者のもともと持っている能力を低下させ、主体性を損なう可能性があるとされています。当事者としては「できることだけど、支援者がやってくれるからいいや」という考えになるわけですね。特別支援も同様の問題が発生する可能性が高いと思います。
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内容が確認できます
日本の看護における「個別性のある看護」の意味を明らかにし、どのように実際に行われているかを調べました。30の研究文献を分析し、結果として「個別性のある看護」は、対象者の状態や状況、その背景を理解し、既存の看護を調整・変更・改善して、対象者の状態を良くする看護のことを指すと定義されました。これには、患者の状態や生活、家族など多くの要素が関わり、看護師は患者をよく理解し、ケアを調整する能力が必要です。
発達障害の人たちが必要とする支援と提供される支援との違い(ズレ)を調べ、そのズレを減らす方法を考えることを目的としました。過去の研究論文から42本を分析し、当事者とその家族に関するズレがあることが分かりました。具体的には、支援方法、診断評価、当事者と支援者の関係、価値観などでズレが生じています。このズレを解消することができる機会もあることが示唆されました。
先ほど、過剰支援が発生する原因として「当事者の成長を考慮しないこと」と「支援の主体が支援者になること」を挙げました。
以下のケースを考えてみましょう。
自閉スペクトラム症(以下ASD)のAさんとBさんは要求行動が苦手です。支援者は、両手を合わせたお祈りポーズを要求行動と関連づけようと支援しました。例えば、「AさんとBさんの届かない場所にある絵本が欲しい場合、お祈りポーズ(要求)をして支援者に絵本を取ってもらう」といったイメージです。
支援者がAさんの前でお祈りポーズの手本をしたところ、Aさんはすぐに真似することができ、支援者にお祈りポーズで要求することを覚えました。この経験で自信をつけた支援者は、Bさんにも同様の支援方法を試しましたが、Bさんはお祈りポーズをなかなか真似してくれないどころか、何度も手首をねじってしまいます。
しかし、支援者は同じ障害のAさんで成功した経験があることから、お祈りポーズを覚えるのも時間の問題と結論づけました。
なぜ、Bさんはお祈りポーズを覚えることができなかったのでしょう。本当に時間の問題なのでしょうか。
答えは「支援者がBさんから見たお祈りポーズを提示していなかった」からです。
なるほどねー
(…どゆこと?)
これは、ASDの特性の一つである「客観視が苦手なこと」が関係しています。Bさんは見たままのお祈りポーズを真似しようとしているので、間違ったことはしていません。つまり、支援者のお祈りポーズの提示方法が間違っているということになります。
ただし、「ASD=全員この行動をする」というのは誤った認識です。今回のケースでは、同じASDのAさんは、支援者のお祈りポーズを客観視して理解しています。
くっ、トクシルも手首をねじれば何とかでき…
ちなみに、ASDの有名な行動に「逆さバイバイ」があります。今回のケースのBさんはこのような状態になっています。Bさん本人ではなく、支援者が支援方法を再検討するべきです。
では、ケースの続きです。
BさんはAさんと同じASDですが、Bさんは、AさんよりASDの症状が顕著であり、視覚情報が優位(理解しやすい)ることがわかりました。それを踏まえて、支援者はお祈りポーズをBさんの正面ではなく横に立って実施したところ、Bさんはすぐに真似をすることができ、支援者にお祈りポーズで要求することを習得しました。
支援者が当事者の横に立つと、正しいお祈りポーズに見えるね!
仮にBさんが視覚優位であることを知らないまま、Aさんと同じ支援を継続したとしましょう。
Bさんは成長して断片的な言葉が徐々に話せるようになっていましたが、支援者はお祈りポーズの支援を継続しました。時間はかかったものの、Bさんはお祈りポーズで要求することができるようになりました。
お祈りポーズはあくまで、要求行動が言語化できない代わりの手段です。成長して言葉が出せるようになったため、これを生かさない手はありません。支援者はお祈りポーズを継続してしまったので、言葉の成長を阻害したという見方もできます。
第三者からみると、過剰支援は「頑張っている感」がでます。印象としては好印象かもしれません。支援のアップデートをするためには、現在成功している支援を止める必要があり、新しい支援に挑戦することを「リスク」と考える人もいるかもしれません。その失敗を可能な限り0に近づけるのが、専門的な知識や経験だと運営者は考えます。その一助に当ブログがなれば嬉しいです。
現状維持は後退あるのみ!
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