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工具による死亡事故から考える 〜ジグという支援について〜

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工具による死亡事故から考える
〜ジグという支援について〜

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工具の「のみ」が誤って足の付け根に当たり男子高校生死亡。第三者委員会が再発防止策を提言。

内容まとめ

2022年5月、愛知県三河地方にある県立の工科高校で、木材加工の実習中に男子生徒が工具の「のみ」を調整していて、誤って左足の付け根付近に当たり、大動脈が傷ついて、その後死亡しました。県の教育委員会は会見を開き、調査を進めていた第三者委員会の報告書を公表しました。報告書では再発防止に向け危険が伴う実習前にどんな場合に事故が起きるか再検討して教職員で共有し生徒に指導することや、事故発生後の対応を周知徹底することなどを提言しています。また県はこの報告書を受け、各学校で、教科ごとに予測される危険に対応するマニュアルの作成を求める、「安全指導ガイドライン」を策定し、20日県立高校や特別支援学校に通知しました。

Yahooニュース.09.22

https://news.yahoo.co.jp/articles/3190217a3518ffb1cbe5ada1ff4b7be7b0370987
CBCニュース【CBCテレビ公式】.工具の「のみ」が誤って足の付け根に当たり男子高校生死亡 第三者委員会が再発防止策を提言 から引用
トクシル

こんにちは!トクシル(@tokushiru)だよー
それでは、ニュースについて考えてみよう!

目次

ニュースの解説

特別支援と関係あるの?

多くの特別支援学校では「作業学習」と呼ばれる授業が行われています。この授業の主な目的は、木材加工や縫製加工などを通じて、将来の就労に繋がるスキルを身につけることです。特別支援学校は生徒たちが自立できるように支援する場所であり、その一環として作業学習が行われています。ただし、作業学習は怪我のリスクが伴う場合があるため、無縁のニュースではありません。

事故の原因は?

まず、「のみ」をご存知でしょうか?

片手で握れる持ち手に長方形の刃が付いた「のみ」という手工具。

ほぞ加工でよく使用する工具ですね。大工が使用する工具のイメージがありますよね。

記事によると「のみの持ち手の先端にある部品を取り外す作業をしている際に、反動で刃が体に刺さった可能性が高いと結論づけました。」と述べています。おそらく、のみの刃が生徒の腹部を向いた状態で、持ち手の部分と金属の刃の部分を抜こうとしていたところ、急に外れて腹部に刺さったという状況だと思います。

運営者は職人ではないですが、なぜ生徒がノミの刃を交換する必要があったのか疑問です。さらに、目撃者がいない状況で謎は深まるばかりです。

ジグについて

基本的な安全策については、専門誌や専門サイトに情報が豊富にあると考えられるため、詳細については割愛させていただきますが、ジグ(治具、jig)を使用するというアイデアがあります。

ジグとは
同一製品を数多く生産する場合は加工、組立、検査など、同じ作業を繰り返し行います。
この場合、安全で精度よくバラツキが少なく、早く作業が出来る様にすることが重要です。この目的のために部品を位置決めし、固定して作業を行える構造を持つ作業工具をジグ(治具)といいます。

日本治具株式会社 「治具とは」
ジグについての詳細はこちら

特別支援の場合は、上記に加えて

  • 技術的な難易度を下げる
  • 安全性を向上させる
  • ミスを減らす
  • 視覚情報で理解を促進する

といった追加の目的があります。合理的配慮の考え方に近いと思います。

合理的配慮とは
障害者が他の者と平等にすべての人権及び基本的自由を享有し、又は行使することを確保するための必要かつ適当な変更及び調整であって、特定の場合において必要とされるものであり、かつ、均衡を失した又は過度の負担を課さないものをいう。

障害者の権利条約.第2条定義から引用
https://www.mofa.go.jp/mofaj/files/000069541.pdf
トクシル

うーん、イメージが湧かないな

ほんの一例ですが、以下のようなものが特別支援のジグになります。

ハサミのジグ

このジグは技術的な難易度を下げること安全性を向上させることが主な目的です。


ハサミを使用する作業において、手や腕に麻痺がある人や手先の細かい作業が苦手な人などには、下の画像のようなハサミが固定できるジグを活用する場合があります。ハサミを上から押せば切断できるという操作性の向上だけでなく、常にハサミが固定されているので、安全性も向上も期待できます。

長方形の台にハサミを立てて固定したジグ。スイッチを押すようにハサミが切れる。
やまねこや☆ショップ情報様.日記.ハサミの固定 から画像引用
https://yamanekoya.shopinfo.jp/posts/39748564/

モノの管理のジグ

このジグは、ミスを減らすこと視覚情報を通じて理解を促進することが主な目的です。


数を数えることが苦手な人や数え間違いが多い人などの場合、下の画像のような6つの仕切りケースを使用します。例えば、全ての仕切りに1つずつ部品を収納すると、数を数えなくても簡単に部品の数が6個であることを確認でき、数え間違いを防ぐことができます。さらに、仕切りの底に数字が書かれた紙を貼ることで、より視覚的な支援を提供することができます。

6個の仕切りに分けられた市販の薄型の箱。
100均収納グッズのカタログサイト「モノサイズ」SIKIRI 6 から画像引用
https://monosizecatalog.com/item-4965534134514/

まとめると、作業の難易度の低下・安全性の向上・ミスの予防・視覚的な支援など、ジグには作業を助ける多くのメリットがあります。

また、ジグを提供する側が「なぜ失敗が頻発するのか」「もっと作業がたやすくなる方法はないか」といった視点を持つことは、特別支援の観点からも重要です。

過剰支援につながる可能性

過剰支援についてはこちらの記事をご覧ください。

過剰支援
当事者ができないことを支援するのではなく、できることまで必要以上に支援すること(トクシルの非公式定義)。


つまり、障害のある人のために環境を整えすぎると過剰な支援となり、逆に環境を整えないことは配慮が足りないということになります。あくまで、申請した本人の能力に合わせた環境調整が必要です。


また、合理的配慮において注意が必要な点は、当事者の配慮申請(配慮してと支援者に依頼すること)後に環境調整を行うこと、そして提供者の過度な負担にならない範囲で環境を調整することです。


ジグの準備段階で注意が必要なことが、徐々に凝った準備になりがちな点です。

トクシル

もっと作業の難易度を下げる方法はないかなー。
もっと支援しよう!

トクシル

うーむ、細かい部分が甘いな…いや、そもそもデザイン性が…ちょっと終わりが見えないな笑

繰り返しですが、当事者の配慮内容にあった環境を調整をすることが大切だと考えます。

まとめ
  • 作業の難易度の低下・安全性の向上・ミスの予防・視覚的な支援が期待できる「ジグ」という支援方法があること。
  • 具体的なジグの例
  • 過剰な支援にならないように、当事者の配慮内容を確認した上でアプローチすることが重要であること。

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